大気中のチリと雲を正確に評価―コンピューターで理論計算:理化学研究所ほか
(2018年3月13日発表)
(国)理化学研究所、(国)国立環境研究所などの研究グループは3月13日、スーパーコンピューター「京」を用いて大気中のチリ(エアロゾル)が雲に与える影響をより正確に再現することに成功したと発表した。雲はチリが核になって形成されるが、従来はその効果を過大に評価していた。雲によって大きな影響を受ける地球温暖化などの気候変動予測をより正確にするのに役立つと期待している。
研究グループには理研、環境研のほか名古屋大学、東京大学、九州大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が参加した。
大気中には森林火災や化石燃料の燃焼などによって多くのチリが放出される。雲はこのチリが核となって形成されるため、地表を覆う雲の量はチリの増加に伴って増えると考えられてきた。ただ、近年、衛星を用いた観測によって、大気中のチリの増加がそのまま雲の増加には結びつかないことが分かってきた。
そこで研究グループは今回、コンピューターで大気とチリの動きを理論に基づいた数値計算でそれぞれ再現する全球大気モデルとエアロゾルモデルを結合、チリと雲の相互作用をより正確に反映したシミュレーションを試みた。
地球表面を14km四方の格子に分けて計算したところ、衛星で観測された雲の分布が非常によく再現できた。従来のシミュレーション結果と比べると、全体的に雲の量は少なくなっており、チリによる雲形成の効果を従来は過剰に評価していたことが分かったという。
従来から、チリの増加によって雲の蒸発が促進され、その結果、雲が減少する場合があると指摘されていたが、研究グループはそうした現象の存在が理論計算に基づいて明らかにできたとしている。