103年ぶり、サクラの新種紀伊半島で発見―「クマノザクラ」と命名、種苗の普及を計画:森林総合研究所ほか
(2018年3月13日発表)
クマノザクラ (提供:森林総合研究所)
(国)森林総合研究所と和歌山県林業試験場は3月13日、共同でサクラの新種を紀伊半島の南部で見つけ「クマノザクラ」と命名した、と発表した。
サクラは、バラ科の樹木で、日本には9種が自生しているほか、染井吉野をはじめ数多くの栽培品種がある。野生のサクラの新種発見は、1915年のオオシマザクラ以来で、実に103年ぶりのこと。
森林総研は、サクラ類の分布体系を再構築する目的で野生種の調査研究を進めており、その一環として2016年と2017年に和歌山県林試と共同で紀伊半島の先端に近い和歌山県古座川町などで現地調査を実施した。
その結果、同地域に分布する野生種のヤマザクラやカスミザクラと似ているが、それらと花の色や葉の形、開花期の異なる新種が熊野川流域を中心とするおよそ南北90km、東西60kmの和歌山、三重、奈良の3県にまたがる範囲に多数分布していることを発見したもので、熊野川にちなんで「クマノザクラ」と命名した。
紀伊半島南部に多いヤマザクラは花の色が白いのに対しクマノザクラはピンクがかっている(写真)。葉は、ヤマザクラ、カスミザクラよりも小さくて細長く卵形で、花序柄(かじょへい)と呼ばれる花を支える茎の部分が短い。
また、クマノザクラは、開花が早く、他のサクラと咲く時期が重ならないのも特徴。森林総研は、2017年に古座川町で行った開花期調査でクマノザクラが3月中旬、染井吉野が4月上旬、ヤマザクラが同中旬、カスミザクラが同下旬にそれぞれ咲きだすことを確認している。
森林総研は、今後について「クマノザクラの中には観賞価値がきわめて高い個体の存在が確認されている。そこで、和歌山県林試と共同で優良個体を選抜し、増殖方法を確立すると共に、病害への抵抗性の検定を行うことにより高品質なクマノザクラの種苗の普及を計画している」といっている。
日本各地で見られる観賞用のサクラの多くは染井吉野だが、樹齢が50年以上になるなどして植え替えの時期にきている樹も少なくないといわれる。森林総研はクマノザクラがその代替になると見て「染井吉野に代わる新たな観賞用樹木として期待される」と位置づけている。