妊娠中の睡眠変化を動物のマウス使い解明―ノンレム睡眠量が増え、覚醒時間が減少:筑波大学
(2018年3月15日発表)
筑波大学は3月15日、妊娠中の睡眠変化を動物のマウスを使って解明したと発表した。
妊娠中期から後期にかけノンレム睡眠量が増え、覚醒時間が減少することなどを発見したという。
妊娠中の女性は、寝つきが悪くなる(入眠障害)、夜間に眼を覚ます(夜間覚醒)などの睡眠障害をきたしやすくなり、母体だけでなく胎児にも様々な影響を及ぼすことが知られてきている。また、子癇(しかん)と呼ばれる急激に血圧が高くなる病気にかかる恐れもある。
しかし、睡眠測定検査は、妊婦に身体的な負担を与えることもあって、妊娠中の睡眠変化の詳細はまだ明らかにされていない。
筑波大国際統合睡眠医科学研究機構の研究グループは、妊娠中の睡眠調節メカニズムの全容解明を目指しており、その一環として人間と様々な点で類似している野生型マウスを使い今回の研究を行った。
人間には、脳が目覚めて意識がはっきりしている覚醒状態と、睡眠状態とがある。そして、睡眠には、浅い眠りのレム睡眠と、深い眠りのノンレム睡眠という2つの異なる睡眠状態があり、一晩にこの2つの睡眠が交互に繰り返されているといわれる。
研究では、妊娠前後の野生型マウスの脳波と筋電図を連続測定して睡眠覚醒状態を評価すると共に、子癇前症のモデルマウスを使って同様の測定を行い妊娠後期の急激な血圧上昇が睡眠覚醒状態や脳波にどのような影響を及ぼすかを調べた。
その結果、睡眠深度の指標とされるノンレム睡眠量が妊娠中期から後期にかけて増加し、覚醒時間が減少、レム睡眠の量は妊娠期間を通じてほぼ一定であることが分った。
一方、子癇前症モデルマウスでは、血圧が急激に上昇する妊娠後期に脳波の周波数が正常の状態より低くなる脳波の徐波化が観測され、高血圧の治療薬オルメサルタンの投与で改善されることが確認されたという。
筑波大は「この研究成果をもとに、睡眠の状態変化や神経科学的側面についてさらに詳しく調べることで、妊娠中の母子の健康改善や治療につながることが期待される」といっている。