植物でたんぱく質を大量に作る技術を開発―一過的でかつ遺伝子組み換え植物より効率的:筑波大学
(2018年3月19日発表)
筑波大学の三浦謙治教授、江面浩教授、星川健助教らの研究グループは、アリゾナ州立大学との共同研究により、植物において一過的に大量のたんぱく質を発現できるシステムを構築したと3月19日に発表した。
遺伝子の機能解析や有用たんぱく質の大量作製を可能にするたんぱく質高発現技術が注目されている。植物におけるたんぱく質作製はコストが安いとの試算があるものの、大腸菌などに比べて発現量が低いため、あまり用いられ ていない。その発現量を上げる方法として、特定の遺伝子を組み込んだ土壌細菌アグロバクテリウムを植物体に感染させ、一過的に植物細胞内で目的のたんぱく質を発現させるアグロインフィルトレーション法がある。この手法では、遺伝子組み換え植物を作出する手間が省ける上に、遺伝子組み換え植物よりも多くのたんぱく質を発現させられることが知られている。このシステムの改良を行い、たんぱく質の高発現を達成した。
アグロインフィルトレーション法でのたんぱく質発現量は、遺伝子を細菌から植物体に運ぶベクターによって違いが出る。当研究グループでは、ベンサミアナタバコという植物に感染させるシステムにおけるベクターを改良することで、たんぱく質の大量発現に成功した。量としてはベンサミアナタバコ1gあたり約4mgの発現量と大腸菌などの発現システムに匹敵する量のたんぱく質発現が可能であることを示している。
また、ベンサミアナタバコのみならず、レタス、ナス、トマト、トウガラシ、メロン、コチョウランなど様々な植物においてもたんぱく質発現が可能となり、それぞれの植物における遺伝子の機能解析等にも用いることができる可能性を示している。
本研究で、植物におけるたんぱく質発現システムのスタンダードとなりうるシステム構築に成功したことは重要な成果であり、特許協力条約(PCT)に基づく国際特許出願ずみである。将来的にはこのシステムを有効利用することで、有用たんぱく質を安価に大量に作製することが可能になり、医療や農業への応用が期待される。