溜め池の水底の放射性セシウム汚染を簡便に測定―泥採取が不要で濃度の深さ分布を10分で測定可能:産業技術総合研究所
(2018年3月19日発表)
(国)産業技術総合研究所は3月19日、溜め池の底土中に蓄積した放射性セシウムの濃度を簡便に測れる装置を、東京パワーテクノロジー(株)と共同で開発したと発表した。竿状の装置を水底に挿すだけで放射性セシウム濃度の深さ分布を測定できる。周辺住民による放射能汚染モニタリングなどに使えるという。
原子力発電所事故で飛散した放射性セシウムは半減期が30年余と長く、山野にある溜め池などでは水底に蓄積した放射性セシウムで汚染が長引く恐れがある。
この汚染調査は現在、中空パイプを溜め池に差し込んで水底の泥を採取し、得られた円柱状の試料を切り分けてそれぞれの放射能を測り、深さ毎のセシウム濃度を割り出している。このため測定には手間と時間がかかっている。
今回開発した装置は、竿を挿すだけで簡単に短時間にデータが得られるというもの。長さ1.5m、重さ2kg弱の円柱状をしており、土中に挿し込まれる先端に近い部分の内部にγ線センサーがセットされていて、電源やデータ処理回路、GPSモジュールなど、計測に必要な機器類はすべて筒の内部に格納されている。
この装置の要は、γ線センサーがとらえたγ線の深さ分布から、放射性セシウム濃度の深さ分布を求める計算手法。
センサーには様々な深さからのγ線が入射するため、測定で得られるγ線の深さ分布は放射性セシウム濃度の深さ分布とは異なっている。これを換算する良い方法がこれまではなかったが、研究グループはこの変換方式を考え出し、これを装置に組み込んで、セシウム濃度の深さ分布を取得できるようにした。
従来のサンプル採取方式との比較実験でほぼ同じ結果が得られたという。
市販パーツを用いて10万円程度で自作でき、測定時間は1箇所約10分ですみ、スマホなどからWi-Fi経由で操作できるという。