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下水処理水の病原性ウイルスを低コストで除去―超微細膜と紫外線の併用で、農業かんがい利用も可能に:国土技術政策総合研究所

(2018年3月16日発表)

 国土技術政策総合研究所は316日、超微細なろ過膜(UF膜)を使った処理と紫外線消毒を併用して下水を高度処理するシステムで、病原リスクの安全性が確保できることを確認し、ガイドラインとしてまとめたと発表した。低コストで安全な再生水の供給が可能になり、下水道業者がこの技術を導入する際の設計や維持管理などの指針として使う。

 下水道の普及によって処理水が増大している。これは将来の水資源やエネルギー資源として安全に使える可能性がある。

 国総研は2015年から沖縄県糸満市で、下水処理水の中の病原性ウイルスを安全処理

するための確認実証試験を進めてきた。

 下水は処理場の沈殿池の中で汚濁物を除去する一時処理と、微生物の働きを利用してさらに有機物を分解する二次処理がされている。

 新しい技術は、この二次処理水をさらに網の目が0.01~0.001µmの超微細膜(UF膜)を通して分子レベルで濾(こ)し取り、紫外線消毒をかけてウイルスや病原菌などを除去する極めて高度なもの。

 この結果、処理水の濁りはほとんどなく、大腸菌はゼロ、ウイルスも実質的に検出されなかった。

 問題はここまでやるとコストもエネルギーもかかることだった。新技術では1日1万tの再生水を処理するにあたり、従来に比べライフサイクルコストが約13%削減できた。

 従来使っていた凝集剤を全く使わないため維持管理費を27%減らし、温室効果ガスも約23%削減できることがわかり、実用性が確認できた。

 再生水の高度処理によって安全性が確保できたため、農業用かんがいとして低コスト、信頼性の高い水資源として使える可能性がある。将来は水資源に恵まれない途上国にも技術支援ができるとみている。