周期的自然変動がCO2排出に影響―森林伐採による増加抑制も:千葉大学/国立環境研究所ほか
(2018年3月20日発表)
千葉大学、(国)国立環境研究所などの研究グループは3月20日、森林伐採などによって二酸化炭素(CO2)の排出量が増えている東南アジアで2000年代に排出量が大幅に減少していたと発表した。異常気象と関係が深いエルニーニョ現象が起きなかったために森林火災などが減少したことが影響したという。CO2排出の増加傾向が周期的な自然変動によって大きく緩和されることを初めて明らかにした。
千葉大の近藤雅征 環境リモートセンシング研究センター特任助教らと国環研、(国)海洋研究開発機構、気象庁気象研究所の共同研究グループが、東南アジアの土地利用の変化を考慮に入れて衛星観測データなどを分析、過去30年間にわたるCO2吸収・排出の変動原因を探った。
その結果、①1980~90年代に増加したCO2排出量が2000年代に大きく減少 ②その主な原因は強いエルニーニョ現象が起きなかったこと ③そのため光合成を阻害する高温・渇水が起きず生態系によるCO2吸収量が増加 ④その結果、CO2吸収量が増加し土地利用変化によるCO2排出量の増大が相殺された、という。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次報告書では世界各地の炭素収支が推定しているが、東南アジアなど熱帯地域では土地利用の変化を考慮していなかった。これに対し、今回の成果は森林伐採によってCO2排出が増加する一方で、繰り返し起きる自然変動がその増加を緩和している事実を初めて明らかにした。
ただ、2015年には非常に強いエルニーニョ現象が再び起きており、自然変動によるCO2吸収の増加は特殊な現象だという。そのため研究グループは「東南アジアのCO2排出量を削減するには森林伐採などの土地利用変化を制限することが重要」と指摘している。