3月としては20年に1度の稀な大雪だったことが判明―栃木県で昨年発生した表層雪崩事故時の降雪状況を調査:気象研究所
(2018年3月22日発表)
気象庁気象研究所は3月22日、平成29年3月に栃木県那須町の山岳域で発生した短時間の大雪について調べた結果を発表した。
この短時間大雪により那須温泉ファミリースキー場付近では3月27日に表層雪崩が起こり、春山登山の講習として雪をかきわけて進む「ラッセル訓練」を行っていた栃木県内の7つの高校の山岳部員グループと教員が巻き込まれて、男子生徒7人と男性教諭1人の8人が死亡、入院した負傷者が多数出た。那須町には、事故の前日の3月26日に雪崩注意報が出ていた。
表層雪崩は、硬く固まった積雪の上に降り積もった新雪が滑り落ちる現象で、短時間に多量の降雪があると起き易いとされている。
今回の調査は、文部科学省の補助事業として行われ、1989年から2017年までの那須における降雪に関する統計解析に加え、3月27日の表層雪崩を引き起こした大雪について事例解析を行って那須における短時間大雪の発生条件などについて調べた。
その結果、那須において大雪は約3年に1度起こっているものの、3月における短時間大雪は約20年に1度の稀な現象だったことが分った。
3月に大雪が降った理由については、閉塞段階の南岸低気圧とその西側で発達した低気圧が関東地方の南東海上を通過し、それら2つの低気圧に伴う雲が一体化したために生じたと見ている。
また、那須岳の風上側(北東側)の斜面上空で発生した雲により降雪が強まったことも数値シミュレーションで分かったとしている。
気象研は、引き続き大雪などによって生じる災害の実態把握とメカニズムの解明に取り組み、防災気象情報の高度化を図る研究を進めるとしている。