スマホで撮影した雪画像から、上空の雪雲特性を読み解く―市民参加の観測が正確な降雪予測につながる:気象研究所
(2018年3月22日発表)
気象庁気象研究所は3月22日、首都圏住民の協力によりスマートフォン(スマホ)で撮影した雪結晶写真をネットで収集し、上空の雪雲の物理特性を解析することに成功したと発表した。1万枚以上の雪結晶の観測データが集まり、これまでにない高密度の雪雲の特徴を明らかにできた。市民参加型の新しいサイエンス活動としても定着しそうだ。
首都圏では少しの積雪でも交通や生活に大きな影響が現れるため、より正確な予報が求められている。そのためには上空の雪雲の気温や水蒸気量、気流、雲、降水粒子などの物理特性が必要となる。しかし本格的な高層観測となるとなかなか難しい。
そこで気象研究所が2016年から市民に呼びかけて「雪結晶画像」を募集する「♯関東雪結晶プロジェクト」を始めた。スマホで倍率を最大にして雪結晶を撮影し、SNSなどで送信する簡単なもの。
2016年から17年の冬場に1万枚以上の画像が送られ、その約70%以上が雪結晶のビッグデータとして解析に十分利用できた。
地上で観測した雪結晶の形や状態から、高層での雪結晶の成長や雲の気温、水蒸気量などが推測でき、まさに物理学者の故 中谷宇吉郎博士の格言「雪は天から送られた手紙」そのものだ。
こうした観測を蓄積すれば首都圏での降雪現象の理解が進み、将来は降雪予測にも繋げられるものと期待している。
雪結晶の撮影方法は、スマホで倍率を最大にしても写せるし、ディスカウント店などで売っている倍率10倍ほどの安価なスマホ用マイクロレンズを使えばより鮮明な画像が得られる。
観測データが最も多く寄せられた2016年11月24日の関東降雪では、午前8時から9時には雲粒付着のない「樹枝状結晶」や「扇状結晶」による雪片が多く見つかった。
11時から12時にかけては、関東南部で「針状結晶」や「濃密雲粒付き結晶」、「霰(あられ)状雪」が多く観測された。
関東南部では、樹枝状結晶や扇状結晶から針状結晶へと代表的な雪結晶が変化したことから、湿潤な雲の中で雪結晶の成長する温度が「−20℃から−10℃」から「—10℃から-4℃」へと変化したことがわかる。
また濃密雲粒付き「六花」や「霰状雪」の存在から、当日昼にかけて関東南部では対流性の雪雲が上空を通過したことが読み取れた。