パリ協定の温度目標とゼロ排出目標は必ずしも一致しない―二酸化炭素の排出量ゼロは急ぐべきか?:国立環境研究所ほか
(2018年3月27日発表)
(国)国立環境研究所及びアメリカのNational Center for Atmospheric Research(NCAR)は、パリ協定における①温暖化を2℃以内に抑える ②温室効果ガス排出をゼロにするという目標について、同時にうまく達成できるのかどうか調べたところ2つの目標は必ずしも一致しないことが明らかとなったと3月27日に発表した。
温室効果ガスの削減に早期からもっと真剣に取り組まなければ、排出をゼロにしても、温度目標が達成できない場合があるという。
パリ協定では、気候変動に世界中が取り組むことで温度上昇を2℃未満に抑える(理想的には1.5℃未満)ことを目標にしている。また、各国が温暖化の原因となる温室効果ガス(二酸化炭素やメタン等)の排出を今世紀後半に正味ゼロまで下げるというゼロ排出も目標としている。
しかし、この2つの目標がどのような関係にあるのかはまだ十分に理解されていないため、ゼロ排出目標は温度目標を達成するのに十分なのか、本当に必要なのかを検討する必要があるという。
そこでコンピュータシミュレーションにより、様々な種類のシナリオを分析し、排出削減と温度目標の関係を明らかにしようとしたところ、これら2つの目標は必ずしも一致しないことが分かった。その一方で短期的に急いで排出削減を行えば、排出を正味ゼロまで削減せずとも温度に関する目標を達成できる可能性がある。
また、排出を正味ゼロまで削減できたとしても、削減を開始する時期が遅れると、温度目標を達成できないかもしれない。温度目標をある時期だけでも超えてしまうかどうかも、温室効果ガス排出削減量に大きな影響を与えることも明らかになった。
温度目標を一時的に超過する場合、温室効果ガスの排出を正味ゼロに削減するだけでは不十分で、それを超えた分を目標値にまで下げるには、さらに排出削減を進める必要がある。今世紀中に正味の排出をゼロにすることよりも、さらにマイナスの値にまで下げなければならない。
パリ協定における2つの目標を達成するには、2つの目標をしっかりと見極め、互いの関係性を維持しながら全世界がその目標達成のために協力し合うことが大切である。