DNAの混入を完璧に防ぐ卓上型クリーンルームを開発:科学技術振興機構/広島大学/農業・食品産業技術総合研究機構/興研株式会社ほか
(2016年7月13日発表)
(国)科学技術振興機構と広島大学、(国)農研機構は7月13日、外来DNAの混入を防止し、極微量の試料でも信頼性の高い解析ができる「卓上型クリーンルーム」を共同で開発したと発表した。同時に、これまで原因がつかめなかった外来DNAが混入してしまうメカニズムも解明した。
DNAの増幅と解析は基礎研究だけでなく、犯罪捜査やがん細胞の解析などにも使われる。地球上の全微生物の99%以上は培養が難しい。それだけに極微量のゲノム(全遺伝情報)を異物の混入なく大量に増幅できれば、遺伝子の直接探査や有用物質の発見にもつながる。
無菌操作に使うレベルの高い現行のクリーンベンチでも混入は防げず、作業者の未熟さや遺伝子組換えで作られた酵素が原因と誤解されていた。
クリーンベンチは箱型の装置で、手を装置内に差し入れて作業をする。外部から取り入れた空気を浄化して装置内部に送り込み、内部を陽圧にして空気を外に押し出す。日本の規格では空気1㎥中に1μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)以上のホコリやゴミが何個あるかでクラスが分けられ、ISO-1は10個、ISO-2は100個、ISO-5は10万個と数が少ないほど清浄度が高い。
一般的なクリーンベンチ(ISO-5)中にも浮遊微粒子がかなり存在し、これが混入の原因と思われていた。しかし試料中のDNAを調べると、人間のものや微生物由来のものが多く確認された。
そこでISO-1の最高清浄度が作れる興研の装置を使って、全ゲノム増幅用の卓上型クリーンルームを開発した。ISO-5のクリーンベンチとISO-1のそれぞれに、同一の試薬でゲノム増幅をして比較したところ、ISO-5のみで混入が確認された。またISO-1でも実験を何度も繰り返すと混入の頻度が高まった。
原因を検討したところ、プラスチック製の実験器具と気流による摩擦で静電気が発生し、実験終了後に流入する空気中のゴミが静電気によって付着することが確認された。フード内面の天井に除電器を設置し、静電気を除去したところ混入はほぼ完全に抑えられた。
DNAへの混入と影響を突き止め、防止策まで報告した例は世界でも初めてという。