北極海が吸収する二酸化炭素量を定量化―北極海はたっぷり二酸化炭素を吸収していた:海洋研究開発機構/気象研究所
(2018年3月22日発表)
(国)海洋研究開発機構 北極環境変動総合研究センターの安中さやか研究員らと、気象庁気象研究所、ベルゲン大学(ノルウェー)、アメリカ大気海洋庁などの国際共同研究チームは3月22日、北極海が吸収する二酸化炭素量の観測に成功し、統一的に見積もる方法を開発したと発表した。
地球全体の二酸化炭素収支を正確に知る事は、この先地球が温暖化するのかどうか、あるいは温暖化する場合どのように温暖化するのかを予測するのに重要である。これまでのところ、北極海およびその周辺の海において、いつどこでどれくらい二酸化炭素が吸収されているのかという観測データが不足していた。しかし今回北極海およびその周辺の海において、年間で海全体の約10%を吸収していること、季節や海域によって吸収量が異なることも明らかになった。
海全体のわずか3%にすぎない面積の北極海およびその周辺は、水温が低く二酸化炭素が溶け込みにくい海であるにもかかわらず、海洋全体で毎年吸収している二酸化炭素の量の約10%を吸収している事が分かった。つまり、北極海の役割が重要であることを意味している。
また、二酸化炭素の吸収は海洋酸性化の原因とも考えられ、海洋酸性化の影響が深刻である北極海における海洋酸性化の実態把握にもつながる。
さらに詳しい情報として,大気海洋間の二酸化炭素交換量、海氷密接度、風速、大気海洋間の二酸化炭素分圧の差も明らかになった。その結果、海氷密接度が低く、風が強く、大気海洋間二酸化炭素分圧差が大きいほど、二酸化炭素交換量が大きいことが分かった。
全球の二酸化炭素収支を正確に見積もることは、地球温暖化予測につながる重要な課題であったが、今後の全球二酸化炭素収支の見積もりに有用な情報を提供し、その不確実性の低減に貢献したという。