中性子星の内部構造解明に手がかり―加速器で重いハイパー核を測定:高エネルギー加速器研究機構ほか
(2018年4月3日発表)
高エネルギー加速器研究機構(KEK)などの研究グループは4月3日、太陽より何倍も大きな恒星が燃え尽きた後にできる超高密度の中性子星の内部構造を解明する手がかりを得たと発表した。通常の物質中には存在せず中性子星内部には存在する可能性が指摘されている特殊な原子核「ハイパー核」を人工的に作り出し、その内部構造も従来の原子核理論で理解可能なことを明らかにした。
高エネ研、東北大、ソウル大学など12機関からなる国際共同実験グループが、高エネ研と(国)日本原子力研究開発機構が共同運用するJ-PARKセンターの大強度陽子加速器を用いて実験した。
原子核を構成する核子(陽子と中性子)は、さらに小さな6種類の素粒子「クォーク」でできている。陽子と中性子はアップとダウンと呼ばれるクォークの組み合わせでできているが、ストレンジと呼ばれる別のクォークを含む核子「ラムダ粒子」を持つ原子核「ハイパー核」も存在する。ただ、ラムダ粒子は寿命がきわめて短く通常の物質中には存在しないため、その性質はよく分からなかった。
そこで研究グループは、加速器を利用して重いフッ素19ラムダハイパー核の励起状態(興奮した状態)を作り、その興奮状態が収まる過程をガンマ線による分光法で精密に測定した。その結果、ラムダ粒子と陽子や中性子の状態によって異なってくるハイパー核のエネルギー状態などが精度よく測定できた。さらに、その結果を理論計算の結果と比較したところ、理論計算による予測値とよく一致していた。そのため、研究グループは「ハイパー核構造の理論計算法が信頼できることを示している」と結論付けた。
中性子星の内部は強い重力で原子核を圧縮したような物質でできており、ラムダ粒子が存在している可能性が指摘されている。ただ、本当に存在しているかどうかは、高密度の原子核中でのラムダ粒子の振る舞いを知る必要があるとされていた。