金属から絶縁体に変化する新物質―10倍の膜厚でも転移:東京理科大学/高エネルギー加速器研究機構
(2018年4月2日発表)
東京理科大学と高エネルギー加速器研究機構(KEK)は4月2日、膜厚を薄くしていくと突然金属から絶縁体に変わる新しい金属-絶縁体転移物質を作ったと発表した。従来知られている転移物質は膜厚が数nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)以下にならないと転移が起きなかったが、新物質はその10倍以上の膜厚で転移する。抵抗が変化する現象を利用するメモリーなど電子素子への応用が可能になるという。
金属-絶縁体転移物質は抵抗変化を利用するメモリーなどへの応用が期待されているが、従来の材料では数nm以下にまで超薄膜化しなくてはならず、実用的な応用には不向きとされていた。
そこで研究グループは、厚いと金属の性質を示すのに、数nm以下に超薄膜化すると絶縁体になるストロンチウムとバナジウム、酸素の化合物(SrVO3)に注目。同様の性質を持つカルシウム、バナジウム、酸素の化合物(CaVO3)とともに均一に混合させた固溶体について詳しく調べ、より厚い膜でも転移が起きるかを探った。
固溶体を作る際にカルシウムとストロンチウムの比が(1-x)対(x)になるようにし、金属から絶縁体への転移が起きる膜の厚を測定した。その結果、xが0.2と0.5の組成になった場合にのみ、膜厚が従来の限界とされていた5nmの10倍以上に相当する50nmの薄膜でも、金属から絶縁体への転移が起きることが分かった。
研究グループは、この原因を調べるため高エネ研の大型放射光施設「SPring-8」で得られるX線などを用いて新しい固溶体の電子状態を詳しく解析した。その結果、薄膜を形成した基板から固溶体が影響を受けて歪み、その影響でバナジウムの電子同士の相互作用が強まったことによって金属-絶縁体転移の膜厚限界が変化したとみている。
今回の成果によって「実用的な応用に対する可能性が大いに広がる」と研究グループはみており、今後、メモリーなどへの応用を目指した実証実験を進める。