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微生物の働きで森林土壌からCO―温暖化加速する可能性も:国立環境研究所/弘前大学

(2018年4月16日発表)

 国立環境研究所と弘前大学は416日、日本を含むアジア・モンスーン地域の森林土壌から放出される二酸化炭素(CO2)の量は地球温暖化によって従来の予測値よりも多くなる可能性があると発表した。地表温度の上昇が土壌微生物の有機物分解を活発化しCO2放出量をどう変化させるかを実験的に確認して突き止めた。この影響により地球温暖化は予想以上に早いペースで進む可能性があるという。

 植物の根の新陳代謝や微生物の働きによって土壌表面から放出されるCO2量は、地球全体で年間3,600t2008年)と推定されている。このうち約7割は微生物による土壌中の有機物の分解によって発生するため、地球温暖化で分解速度がさらに高まれば温暖化がさらに加速すると予想されている。ただ、それを検証するための長期的な実験データは限られていた。

 そこで研究グループは、青森県 白神山地のミズナラ林に独自に開発した実験装置を設置、5年以上にわたって地表面の温度とCO2排出の関係を詳しく調べた。赤外線ヒーターで地表面温度を約2.5℃上昇させた温暖化区と自然のままの対照区で地表からのCO2排出量を測定、地表温度の上昇によって土壌中の有機物の分解速度がどう変化するかを測定した。

 その結果、地表温度が1℃上昇すると微生物が土壌中の有機物を分解することによって発生するCO2量は6.217.7%上昇、5年間で平均すると10.9%増加していることが分かった。そのため、温度が10℃上昇した際にCO2の排出速度が何倍に増えるかを示す指標「Q10値」は平均2.66となり、従来の多くの将来予測モデルが採用していた2.0よりも概ね大きいものだった。

 今回の成果について、研究グループは「この結果がアジア・モンスーン地域に広く適用可能ならば、現在予測されているよりも早いペースで地球温暖化が進む可能性が考えられる」と話している。