ハサミで好きな形に切れるディスプレイ開発に成功:物質・材料研究機構
(2016年7月13日発表)
(国)物質・材料研究機構は7月13日、機能性材料研究拠点 電子機能高分子グループの樋口昌芳グループリーダーらの研究グループが普通のハサミで切れる新しいディスプレイを開発した、と発表した。このディスプレイは使用者がハサミで好きな形に切り取って使用することが出来るので、衣服や建物など複雑な形状のものに張り付けて使用するなど、従来のディスプレイでは出来なかった多様な表示用途への展開が可能になると期待されている。
文字や絵などを表示する一般的なディスプレイは身の回りに幅広く使われているが、液晶を用いたモノは液晶が液体のため、また有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)は水や酸素のような不純物に弱いため、いずれもディスプレイの周囲を封止しなければならず、表示のためには電気を流し続けるので、完成後にディスプレーをハサミで切って自由に形を加工することなど出来なかった。
今回、研究グループは、これまで研究してきたエレクトロクロミック特性(EC特性=電気化学的酸化還元で色が変わる特性)を持つポリマーを用いてハサミなどで好きな形に切れるディスプレイを開発した。このポリマーはスプレイを使ってフレキシブルな基板上にきれいに製膜でき、表示を変えるには電気を数秒流すだけで良く、電源を切っても表示は保持される。そのため、電源を外しても使用でき、好きな形に切った後でも表示を変えられる。
この様なエレクトロクロミックなデバイスは既にボーイング787の窓に使われているが、実用化に耐える材料が少なく、実用化は限られている。研究グループは今後、この成果を発展させ、大面積でも少ない消費電力で表示できる新デスプレイとして、乗り物や建物の窓、内/外装、椅子、机、表示物、あるいは傘、サングラス、レインコートに応用、様々なモノを透明にしたり、着色したりする”色を楽しむライフスタイル”普及に役立てたい、としている。