養豚廃水に含まれる窒素の大幅低減を実現―現用浄化装置の簡単な改修で除去率が5倍以上にアップ:農業・食品産業技術総合研究機構ほか
(2018年4月18日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は4月18日、養豚農家が養豚廃水の処理に使っている浄化装置の性能を大幅に引き上げる方法を見つけたと発表した。窒素除去率が5倍以上にアップするという。
家畜のふん尿を主体とする畜舎廃水には、高濃度の窒素が含まれている。このため養豚農家は、浄化処理を行っているが、処理水を河川などに排出するには含まれるアンモニアなどの窒素化合物の濃度を水質汚濁防止法の基準値以下にすることが定められている。
その廃水浄化の方法としては「連続曝気(ばっき)式活性汚泥処理」と呼ばれる方法が広く普及しているが、来年6月以降は排出規制の強化が予定され、養豚農家は現用の同施設の窒素除去能力の向上を迫られている。
今回の研究は、そのような状況の変化に養豚農家が対応できるようにするため農研機構とフランスの国立環境・農業科学技術研究所(IRSTEA)が共同で行ったもので、現在養豚現場で使っている連続曝気式活性汚泥処理装置に溶存酸素濃度を測定・管理する装置を取り付ける簡単な改修を行うだけで窒素除去能力を大幅にアップできることを見つけた。
活性汚泥処理は、微生物の働きによって廃水などの汚水を浄化する代表的な技術で、曝気槽という酸素を水中に吹き込むタンクの中で活性汚泥(微生物の集まり)の働きによって連続して送りこまれてくる汚水を浄化するというのが連続曝気式活性汚泥処理の原理。
研究は、まだ小規模実験の段階だが、溶存酸素濃度を測定・管理する装置を取り付けて曝気槽の溶存酸素濃度を低い値に保つようにすると通常の条件では13%以下の窒素除去率が5倍以上の60%以上にまでアップすることが分った。
低酸素濃度状態でこのような効率的な窒素除去が起こる理由について研究グループは「溶存酸素濃度によって、微生物が窒素を代謝する経路が変化するためと考えられる」といっている。
畜舎廃水の浄化処理ではBOD(生物化学的酸素要求量)も低減しないとならないが、溶存酸素濃度が低い条件でもBODは良好に除去されることを確認している。
研究グループは、現在次のステップとして小規模実験装置と実規模装置の中間にあたるパイロットプラントでの実験に取り組んでおり、来年度から現場での実証実験開始を目指している。