多種多様な単原子膜の合成が可能に―高品質な膜を溶融塩CVD法で基板上に成長:産業技術総合研究所
(2018年4月18日発表)
(国)産業技術総合研究所は4月18日、高品質な多種多様の単原子膜を基板上に簡便に成長させることができる技術を、シンガポール南洋工科大学と共同で開発したと発表した。二次元材料である単原子膜の物性研究をはじめ、高機能ナノデバイスへの応用研究などの進展が期待されるという。
単原子膜としては近年、炭素原子一層の二次元材料であるグラフェンが、ナノテクノロジー分野の有力材料の一つとして活発に研究開発されている。研究グループが今回開発したのは炭素原子ではなく、遷移金属とカルコゲンと呼ばれる原子から成る単原子膜。
遷移金属はマンガン、鉄、コバルト、銅など周期表第3族から第11族の間にある金属元素、カルコゲンは酸素、イオウ、セレンなど第11族の元素を指す。
遷移金属とカルコゲンが結合したものを遷移金属カルコゲナイドといい、遷移金属カルコゲナイドの単原子膜はグラフェンには無い物性を持ち、その応用が注目されている。しかし、安定的に成長させることができる単原子膜はごく少なく、これまで合成できた膜は数種類に限られていた。
開発したのは溶融塩CVD法と呼ばれる製法。融点の高い遷移金属源に塩化ナトリウムあるいはヨウ化カリウムの塩を添加して融点の低い溶融塩にし、ここにカルコゲンをキャリアガスで供給して、化学気相成長(CVD)法により基板上に遷移金属カルコゲナイド単原子膜を成長させるというもの。
今回、12種類の遷移金属と3種類のカルコゲンを用い、合計47種類の単原子膜を合成、このうちの35種類はこれまで合成されたことのない新しい二次元物質だった。産総研が独自開発した低加速電子顕微鏡による観察で、いずれも欠陥や不純物が少なく、高品質であることが分かったという。
合成された単原子膜は電界効果型トランジスタやダイオードなど多くの電子デバイスに応用できる可能性があり、ナノエレクトロニクスへの貢献が期待されるとしている。