カーボンナノチューブ使い新造影剤―高輝度蛍光で体内を画像化:産業技術総合研究所ほか
(2018年4月19日発表)
(国)産業技術総合研究所と(株)島津製作所は4月19日、経口投与や注射などで体内に入れると体外から照射した赤外光を受けて生体透過性の高い蛍光を強く発する造影剤を開発したと発表した。ナノメートル(1nmは10億分の1m)単位という極細の中空炭素分子「カーボンナノチューブ(CNT)」を酸化させて合成した。体内の様子を体外から蛍光画像としてとらえられるため、医薬品の副作用評価や臓器診断などに応用できると期待している。
開発したのは、高輝度近赤外蛍光イメージングプローブと呼ぶ新造影剤。研究チームは紫外線を当てるとオゾンを発生する市販装置を使い、効率よくCNT表面を酸化する方法を考案した。赤外光照射で蛍光を発する性質を持つCNTは、表面を酸化させたことで特に生体透過性の高い波長1,280nmという近赤外領域で最高強度の蛍光を発するようになった。そこで、この酸化CNTが血液中でうまく分散するよう表面処理し造影剤として使い易くした。
マウスを使った実験では、尾の静脈から新造影剤を投与、体外から波長980nmの近赤外光を照射して蛍光を検出できるかどうかを確かめた。その結果、1,150~1,400nmの近赤外光が検出でき、生体内のイメージ画像が得られた。さらに、経口投与実験でも体外から消化管が動く様子を蛍光画像としてとらえることに成功した。
さらに、体内の特定部位を画像化するため、特定のたんぱく質とだけ結合する抗体の一種「免疫グロブリンG(IgG)」を酸化CNTの表面にコーティングした。その結果、容器内での実験では標的の特定たんぱく質がある部分だけが画像化でき、標的指向性のある造影剤として使える見通しを得た。CNTの安全性については、これまでの評価では明確な急性毒性は確認されていないという。
研究チームは「開発した酸化CNTの合成法は、複雑な装置を必要とせず数分間という短い反応時間で合成でき、スケールアップが容易」として、標的指向性を持つ高輝度近赤外蛍光イメージングプローブとしての応用が期待できるとしている。