指先血液チェックで糖尿病早期発見―簡易検査に医療費削減効果:筑波大学
(2018年4月23日発表)
筑波大学は4月23日、薬局やドラッグストアに行ったときに自分で指先から微量の血液を採取して糖尿病の早期発見につなげる簡易検査「指先HbA1cチェック」が国民の健康寿命延長や医療費削減に効果的だとする研究成果を発表した。医療費の増大に悩む地方自治体の政策立案などの際に有力な指針になると期待している。
厚生労働省が2017年に発表した国民健康栄養調査によると、糖尿病を強く疑われるか、その可能性を否定できない人は2,000万人に上る。しかし、糖尿病の初期には自覚症状が乏しく、検査を受けないと見つからずに重症化することも多い。健康寿命はもとより、医療経済の面から見ても早期発見の重要性が指摘されている。
このため筑波大医学医療系の矢作直也准教授、近藤正英教授、庄野あい子非常勤講師らの研究チームは、薬局などに行った際に誰でも手軽に検査を受けられるようその場で自ら指先の血液を採取、併設された検体測定室で検査できるようにする研究プロジェクトを進めてきた。検体測定室では血中HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)を検査、糖尿病の早期発見につなげる狙いだ。
今回、研究チームが2010年から5年間に渡って東京都足立区の10カ所の薬局で進めてきた2,024人分のデータを分析した。その結果、40~74歳の集団一人当たりの検査費用は、従来、健康診断や診療所などで行われていたスクリーニング検査に比べ5万2,722円安くて済んだ。また、完全に健康で過ごす1年間を1QALYと算定する健康寿命の指標「質調整生存年」は0.0203ポイント増加した。
厚生労働省の告示によって、2014年3月から薬局やドラッグストアでも検体測定室を設置すれば指先HbA1cチェックが実施できるようになり、2018年2月末時点で全国1,586カ所に広がっている。研究チームは、検体測定室の普及によって「糖尿病の早期発見が進み、医療費の削減と健康寿命の延伸の双方に役立つ」と期待している。