2分子膜1層の超極薄、大面積の有機半導体を開発―印刷によるフレキシブルな電子デバイスの開発加速:東京大学/産業技術総合研究所ほか
(2018年4月24日発表)
東京大学と(国)産業技術総合研究所の共同研究グループは4月24日、厚さがわずか2分子の超極薄で、均質、大面積の有機半導体を作製できる技術を開発したと発表した。印刷や塗布によりフレキシブルな電子機器を製造するプリンテッドエレクトロニクスの進展が期待されるという。
有機半導体を用い、様々な形状に対応できるフレキシブルな電子デバイスを印刷法などで作る研究開発が活発に推進されている。
これまでの研究で、印刷による高性能な金属配線の作製には目途がついてきたが、これと組み合わせる半導体の印刷についてはまだ課題が多く、均質、高性能な半導体の形成は遅れている。
研究グループは今回、究極に薄い生体細胞膜の形成メカニズムからアイデアを得て、新たな製膜技術の開発に成功した。
生体細胞膜は2分子膜の一種で、有機分子が向きを揃えて横つながりに単分子層をなし、これとは分子がすべて逆向きの単原子層が向き合って一層構造の2分子膜を構成している。
半導体の特性を持つ有機分子から成る有機半導体でも、これと同じような膜形成が試みられ、2分子膜を作り出すことは可能になったが、2分子膜がランダムに積み重なる多層化を防げず、特性がばらついていた。
研究グループは「分子の長さをわずかずつずらす」という着想を細胞膜から得て、長さの異なる2種の分子を用いることにより、分子膜同士の積層を抑えることに成功した。
この2種分子を混合した溶液をシリコンウエハー上に塗布したところ、ウエハー全面に渡って膜厚が分子レベルで均質な薄膜が得られ、原子間力顕微鏡での観察により、2分子膜一層のみの超極薄半導体であることが分かった。
また、高エネルギー加速器研究機構(KEK)のシンクロトロン放射光でこの超極薄半導体を観察した結果、高い結晶性が認められた。
この超極薄半導体でTFT(薄膜トランジスタ)を作製し特性を調べたところ、外部からの刺激に対して電流値が敏感に応答することが確認されたことから、超高感度な分子センサーへの応用が期待されるとしている。
今後はフレキシブルな電子機器などの実用化に必要な仕様を満たす超極薄TFTの開発を進めるという。