ダイヤモンドの高速エッチング技術を開発―超低損失パワーデバイスの創製に道:金沢大学/産業技術総合研究所
(2018年4月26日発表)
金沢大学と(国)産業技術総合研究所の共同研究グループは4月26日、究極のパワーデバイス材料であるダイヤモンドの高速・異方性エッチング技術を開発したと発表した。この技術を応用すると、将来超低損失なダイヤモンドパワーデバイスの創製が期待されるという。
パワーデバイスは直流・交流変換などに用いられる電力用の半導体素子で、現在はシリコン(Si)製が主流。だが、電力利用の効率化に向けてパワーデバイスの性能のさらなる向上が求められており、既に性能の限界に近づいているシリコンに代わる新材料の研究開発が推進されている。
ダイヤモンドはパワーデバイスの新材料の中では最も高い絶縁破壊電界とキャリア速度、熱伝導率を有し、パワーデバイスに要求される高耐圧化・低損失化・高速化・小型化の実現に有利とされる。しかし、硬度が最大で化学的にも安定なため、デバイス構造を作製するうえで基本となるエッチングが難しいという課題を抱えている。
また、このエッチングには一般にプラズマ(電離気体)が用いられているが、エッチングが低速だったり、エッチング表面付近にプラズマ起因のダメージが生じ、デバイス性能を劣化させるなどの欠点があった。
研究グループは今回、プラズマを使わないでエッチングできる非プラズマプロセスを開発した。
新技術は、ダイヤモンドを構成している炭素原子がニッケル金属の中に溶け込む、いわゆる「ニッケルの炭素固溶反応」を利用したもので、併せてこの反応を高温水蒸気下で進行させるようにした。
その結果、高速でかつ継続的なエッチングに成功した。ニッケルの炭素固溶反応はダイヤモンドとニッケルが接触する部分で起こるので、その部分のみを選択的にエッチングできる。
シリコン半導体のプロセスで用いられている、特定方向のエッチングが速く進行する、いわゆる異方性エッチングも備えている。プラズマを用いないのでプラズマダメージが無いといった特長もある。
この技術によるエッチングは低損失、高耐圧のダイヤモンドパワーデバイスの開発を促すことが期待されるとしている。