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彗星に重い窒素が多いナゾを解明―物質進化の解明に手がかり:筑波大学ほか

(2018年4月27日発表)

 筑波大学と東京大学の研究チームは427日、化学的な性質は同じだが重さの異なる窒素の同位体の比率が隕石や彗星と星間分子雲との間でなぜ異なっているのかを解明したと発表した。宇宙で5番目に多く生命にとっても不可欠な元素である窒素同位体の存在比のナゾが解明できたことで、宇宙での物質進化の仕組みに関する理解が進むと期待している。

 筑波大の古家健次助教と東大の相川祐理教授が、コンピューターによる数値計算で解明した。数値計算では、希薄な星間ガスから分子雲が形成される際にさまざまな物理的化学的な反応を経て窒素同位体が生まれる過程を数式にした「反応ネットワークモデル」を用いた。

 その結果、①窒素分子自身による紫外線遮蔽効果がある ②星間を漂うチリの表面でアンモニア氷が生成される事が分かった。このため、星間ガスから分子雲が生まれるまでの段階ではガスは窒素15が少ないものの、さらに物質進化が起きてできる氷を含む固体では多くなる。その結果、太陽系形成時の情報を持っているとされる隕石や彗星などでは窒素15の存在比が高くなるという。

 宇宙に存在する通常の窒素の重さを示す質量数は14だが、太陽系の質量の大部分を占める太陽には質量数15の窒素がおよそ440分の1の割合で含まれている。しかし、隕石や彗星などでは窒素15の存在比がこれより高く、この差がどのようなメカニズムで生まれるかはナゾとされていた。