新型レーダーで突風の詳細な観測に成功―わずか5分間で激変する積乱雲内部の風向きを解明:気象研究所
(2018年5月9日発表)
気象庁気象研究所は5月9日、台風の接近に伴って短時間に竜巻などを引き起こす積乱雲の解析に世界で初めて成功したと発表した。近年増加している都市部の局地型豪雨の発生などを直前に検知し、水防対策につなげるのが目的。
昨年7月4日の午後10時頃、埼玉県草加市に珍しい竜巻が発生し、大きな被害をもたらした。この竜巻の発生メカニズムの分析に取り組んだ。
当時は台風3号が草加市から約190km離れた本州南岸を東北東に進んでいた。突風は台風の外側で発達した積乱雲の下で発生した。
気象研究所(茨城県つくば市)は、日本無線(千葉県千葉市)の協力を得て2つのフェーズドアレイレーダーで観測した。
通常のレーダーはお椀型のアンテナを回転させ、首振りさせながら観測するが、新型のフェーズドアレイレーダーはアンテナが回転しない。板状に固定されたアンテナ部分の素子を短時間で電気的に操作するため、風の強さと方向を10秒から30秒の短時間で観測できる。
30秒ごとに積乱雲の中を立体的に調べたところ、雨域の高度が下がったのを機に気流構造が急激に変化し始め、わずか5分間に強い渦に伴う突風が生じる様子が解明された。
こうした動きは竜巻発生に特徴的なものと考えられるが、今回の観測と分析によって初めて全容が捉えられた。