生物発光化合物に蛍光色素を付けて多色発光を実現―生体活動の測定や医療診断などの用途拡大へ:産業技術総合研究所ほか
(2018年5月16日発表)
(国)産業技術総合研究所と慶應義塾大学の共同研究グループは5月16日、蛍光色素の付いた多種類の発光基質を開発し、生物発光の多色化や高輝度化などを実現したと発表した。生物発光を用いた検査・分析・検定、医療診断などの高性能化や用途拡大などが期待されるという。
ホタルなどにみられる生物発光は、生体内の生物発光酵素が、生物発光基質と呼ばれる化合物と特異的な触媒反応をし、基質が貯めている化学エネルギーを光として放つ現象。発光そのものは弱く、発光色も限られていることから、これらを改良することによって生物発光の活用の道を広げることが期待されていた。
研究グループは、天然の生物発光基質であるセレンテラジン(nCZT)という化合物に、様々な蛍光色素分子を導入し、一連の蛍光色素付き発光基質を合成した。また、合成した発光基質に対して最適に発光する新たな人工生物発光酵素群を開発した。
これらの人工生物発光酵素や天然の発光酵素と、合成した発光基質群とを反応させたところ、青色から赤色まで多彩な発光色を得た。
開発した発光基質の一部は、特定の発光酵素と選択的に反応することが認められた。また、蛍光色素導入の際の合成中間体であるアジド基付き発光基質は、極めて高輝度の緑色発光を酵素選択的に放つことが見出された。
これらの成果は、高感度診断試薬の開発、がんの早期診断、各種バイオアッセイ、生体イメージングなどに広く利用することが期待されるという。