エルニーニョが台風の異常発生を引き起こす要因を解明―北海道ジャガイモの異常品薄、ポテチショックの遠因にもなった:筑波大学
(2018年5月11日発表)
筑波大学は5月11日、エルニーニョ現象の翌年は台風の発生数が異常に増加する要因を明らかにしたと発表した。エルニーニョは高い確率で半年前からの発生予測が可能となっている。台風の増加につなげられたことで、災害のリスク管理や農業被害対策、経済活動への影響把握にも道が広げられそうだ。
エルニーニョは、平均海水温の高い水域が東に偏る現象で、数年おきに発生する。世界各地を襲った天候異変の原因ともなっている。日本では冷夏、暖冬になる傾向がある。
筑波大学生命環境系の植田宏昭教授、釜江陽一助教らのグループは、エルニーニョの後に連動しておこるインド洋の海面水温の上昇に注目した。
過去3回のエルニーニョ(1988年、1998年、2010年)を抽出し、それぞれが終息する12月から翌年11月にかけての「衰退期」の海面水温、降水量、台風発生数、大気循環などについて調査した。
その結果エルニーニョの翌年、つまり衰退期の春から夏にかけて、インド洋全域にわたって暖水域が広がり高気圧が強まることから西太平洋では台風の発生が抑えられた。
これに対して夏後半から秋にかけては、インド洋の海水温上昇が終わり高気圧も東に移動したことで、9月以降に台風の影響発生が顕著に増加した。
つまりエルニーニョとそれに引き続くインド洋の海水温上昇の変化で、台風の発生頻度がはっきりと変わることが確認できた。
エルニーニョ衰退期と台風の発生、影響を考えると、2017年に店頭からスナック菓子のポテトチップスが消えた「ポテチショック」も当てはまるという。
このエルニーニョは2014年に発生し16年に終息した。衰退期の16年の夏の前半は一つも台風が発生しなかったが、夏後半から12月にかけて北海道に3個も上陸し観測史上初を記録した。日本全体の上陸数も6個と史上2番目に多かった。
北海道上陸や接近に伴う記録的な大雨によって、国内のジャガイモ生産の8割以上を担ってきた北海道が壊滅的な被害を被った。エルニーニョが農業、社会経済学現象を引き起こしたメカニズムがよく説明できるとしている。