緑藻(りょくそう)「ムレミカヅキモ」の全ゲノムを解読―世界でも初めての成果:国立環境研究所ほか
(2018年5月29日発表)
ムレミカヅキモNIES-35株
(提供:国立環境研究所)
(国)国立環境研究所は5月29日、緑藻の一種「ムレミカヅキモ」の全ゲノム(全遺伝情報)を解読したと発表した。
緑藻は、緑色の光合成色素を持つ緑色をした藻(も)。
ムレミカヅキモは、ミカヅキという名の通り三日月形をした長さが10µm(マイクロメートル、1µmは100万分の1m)程度の小さな藻で、重金属や農薬をはじめ様々な化学物質に高い感受性を示すなど試験生物に必要な条件を多数備えている。
このため、ムレミカヅキモは、OECD(経済協力開発機構)が定める生物を化学物質に曝(さら)した際の生存率や成長、繁殖などへの影響を評価する生態毒性試験の推奨種として世界中で広く用いられている。
しかし、ムレミカヅキモについての生物学的な知識や化学物質の毒性メカニズムに関する研究は少なく、全ゲノムの解読が行なわれたのは今回が世界でも初めて。
環境研(NIES)の微生物系統保存施設(NIESコレクション)では、微細藻類、原生動物、絶滅危惧藻類の系統保存を行なっており、その関連でムレミカヅキモを研究開発や教育のために分譲している。
今回、研究グループは、ムレミカズキモの基礎的情報を得る一環として、同施設で最も分譲件数が多い「NIES-35株」と呼ばれるムレミカズキモのゲノム解読に挑戦した。
その結果、全ゲノムは5,120万の塩基対からできていて、たんぱく質の遺伝暗号を13,383個持っていることが判明。環境中の低濃度の金属を効率良く細胞内に取り込む仕組みが組み込まれていることが分った。
研究グループは、「この研究で得られたゲノム情報は、化学物質の毒性評価のみならず、その毒性メカニズムの研究にも活用できると考えられる」といっている。
この研究の内容は、5月23日に英国の科学誌「Scientific Reports」に掲載された。