富士山噴火の歴史が一目で―地質図50年ぶりに改訂:産業技術総合研究所
(2016年7月15日発表)
刊行される「富士火山地質図(第2版)」の一部
(国)産業技術総合研究所は7月15日、10万年前に誕生した富士山の噴火の履歴が一目でわかる「富士火山地質図」を約50年ぶりに改訂、7月下旬に第2版として発行すると発表した。東日本大震災以降、日本列島の地殻活動が活発化しているのに伴い、富士山の噴火に対する危機意識が高まる中で、今後の噴火予測の研究や防災・減災の取り組みに役立つと期待している。
1968年に発行された初版の富士火山地質図は溶岩流の分布を詳細に調べた研究をもとに噴火の歴史を明らかにしている。一方、火山灰の分布から噴火の歴史を探る研究もおこなわれているが、両者の結論はこれまで必ずしも整合性が取れるものではなかった。
そこで産総研は、富士山全域にわたって地表踏査を実施、さらにボーリング調査や山腹の噴火口周辺を約40カ所にわたって深さ2メートルまで掘り下げるトレンチ調査などを進めた。146カ所で採取した溶岩流や火山灰、火砕流に埋もれていた炭化物の放射性炭素年代測定も今回初めて実施、詳細な噴火履歴を調べた。その結果、山腹における溶岩流と火山灰の分布の両面から、互いに矛盾のない噴火史を詳細に表すことができたという。
今回の調査では、山麓部や樹林帯など立ち入りが困難な場所についてはアジア航測(株)が開発した富士山の地形を表す赤色立体地図も参照。富士山のいたるところで噴火口と推測されるくぼ地が見つかったほか、その後の実地調査で新たな噴火口を多数確認することができたという。また山頂付近を調査した結果、山頂で最後に起きた爆発的な噴火は約2,300年前であったことも明らかになった。
産総研は第2版を印刷物として7月25日ころから委託販売店で一般に提供するほか、近々デジタルデータも提供する。山梨県と静岡県は今回の第2版を参考にハザードマップの改定を進めており、周辺住民ばかりでなく観光客や登山者を対象にした富士山噴火時の避難ルートも盛り込む予定という。
今回の地質図について、産総研は「噴火の規模と火山灰の影響範囲の精度が高まった」とみており、将来起こりうる災害の規模の推定や首都圏の防災・減災にも寄与すると期待している。