加工技術を複合化し高精度の微細加工を実現―一人で持ち運べる超小型・軽量の加工機を作製:産業技術総合研究所
(2018年5月31日発表)
(国)産業技術総合研究所は5月31日、レーザー加工と電解加工を組み合わせた新しい加工原理の超小型複合加工機を開発したと発表した。これまで加工が困難だった小径の穴や狭い溝など、高アスペクト比の形状を、デブリをほとんど発生させずに加工でき、世界に類のない金属加工製品の製造が期待できるという。
多くの産業分野で広範に用いられているレーザー加工は高速、高精度の加工が特徴だが、材料の溶融・蒸発の際にデブリの原因となる熱影響層が発生する。エッチング加工は熱影響層はほとんど発生しないが、高アスペクト比の加工は困難で、それが可能な反応性イオンエッチングは金属加工が難しい、などの問題を抱えている。
加工法の適切な複合化による高機能化に取り組んでいる産総研グループは、先にレーザー加工と、電気化学的なエッチング加工である電解加工とを組み合わせ、極細管の加工が可能な複合加工機を製作したが、デブリの発生が産業応用の障害になっていた。
研究グループは今回、複合加工機のデブリレス化を実現した。加工表面への電解絶縁被膜生成、レーザーによる被膜除去、被膜除去部の電解加工、を繰り返すことによって微細加工を進めるというもので、デブリを出さずに超微細な形状を加工できる。
試作した加工機は幅43㎝、高さ40㎝、奥行き30㎝で、重さ16㎏と超小型・軽量。一人で持ち運びできる。
この加工機を用いれば、直径100㎛(マイクロメートル、1µmは100万分の1m )以下の穴を多数持つ小径多孔インジェクションノズルや直径200㎛以下の超小型ステントなどを作れるようになる可能性があるという。