汽水湖でアオコが発生するメカニズムを解明―塩分に耐えるラン藻類のゲノム解析で明らかに:筑波大学ほか
(2018年5月31日発表)
ミクロシスティスの顕微鏡写真 様々な形のコロニーをつくる
(画像提供:筑波大学)
筑波大学、京都大学、(国)国立環境研究所は5月31日、共同でアオコが塩分を含む汽水湖(きすいこ)で発生するメカニズムを解明したと発表した。
湖沼の水面が緑色の粉をまいたような色になることがある。この現象をアオコと呼び、最も報告例が多いのは「ミクロシスティス」というラン藻類が大量増殖したアオコで、琵琶湖をはじめ日本各地の淡水の湖沼でしばしば発生している。
ところが、塩分に弱いはずのミクロシスティスが、ときに塩分のある汽水湖で繁殖することがある。汽水湖の一つ島根県の宍道湖(しんじこ)で2010年に発生し大きな問題になったアオコのミクロシスティスは、塩分に対する耐性を持っていた。
しかし、そのミクロシスティスがどのようにして塩分に耐えているのか、また、どのようなメカニズムで塩分耐性を持つようになったのか、といったことなどはまだ分かっていない。
今回の研究は、筑波大藻類バイオマス・エネルギーシステム開発研究センターの研究グループが京大生態学研究センター、国立環境研と共同で行った。
研究は、宍道湖と、北海道東部にある白鳥が飛来する汽水湖の濤沸湖(とうふつこ)から採取したミクロシスティスのゲノム(全遺伝情報)解析により行った。
その結果、塩分耐性を持ったミクロシスティスは、バクテリアの細胞に塩分耐性を与える分子として知られるスクロース(砂糖の主成分)を合成する遺伝子を持っていることが判明。塩分が高いほどその遺伝子が多く合成されて細胞内にスクロースが多く蓄積され、塩分濃度が1%になるまで繁殖するというメカニズムになっていることが分った。宍道湖の水面近くの塩分濃度は、0.1~0.5%といわれている。
スクロースを合成する遺伝子を持った塩分耐性のミクロシスティスは、調査したところ東郷湖(とうごうこ・鳥取県)、湖山池(こやまいけ・同)、網走湖(北海道)などの汽水湖でも見つかった。
一方、塩分耐性のない普通のミクロシスティスは、スクロースを合成する遺伝子を持たず、塩分濃度が0.25%を超えると増殖しなくなった。
また、宍道湖と濤沸湖から得た塩分耐性を持つ両ミクロシスティスのゲノムを比べたところスクロースを合成する遺伝子にほとんど違いがなかった。
研究グループは、「塩分からアオコの出現をある程度予測することが可能になると考えられる」といっている。