色と食味の良い早生のりんご「紅みのり」を育成―高温障害をのり越える新品種で、りんご農家の経営に役立てる:農業・食品産業技術総合研究機構
(2018年6月12日発表)
「紅みのり」の結実状況
(提供:農研機構果樹茶業研究部門 )
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は6月12日、地球温暖化による高温障害をのり越えて着色不良や果肉の軟化を防ぎ、見た目も食味も優れた早生の新品種「紅みのり」を開発したと発表した。東北南部以南のりんご生産者の経営安定に貢献すると期待される。
早生のりんごは、気温の高い時期に果実が成熟することから、表皮の赤色の色が落ち、果肉の軟化や収穫後の日持ちが悪くなることで、商品価値が下がる傾向にあった。
特に最近の温暖化によってりんご産地では早生の主力品種「つがる」でこうした問題が多発し、対策が、求められていた。
農研機構は、1981年に早生の主力品種「つがる」とニュージーランド産の「ガラ」を交雑させて岩手県盛岡市の農園で育成を始めた。
その結果できた「紅みのり」は、成熟期は「つがる」より2週間ほど早い8月下旬に、果実の重さは300g程度で「つがる」と同程度になった。
果皮は見栄えの良い赤色を保ち、表面に鉄さび状のざらつきが出る品質低下は現れなかった。糖度は13%から14%で、酸度は100ml当たり0.3gと、甘みと酸味のバランスが良好だった。果肉も早生品種としては硬めで、「つがる」より5日ほど日持ちが優れていた。
その反面、収穫前の落果の発生頻度は「つがる」と同じ中程度で、落果防止剤の散果は必要となる。りんごの皮や果肉に亀裂が入る裂果(れっか)が18%程度発生するため肥料管理に注意がいる。葉っぱに発生する斑点落葉病にはかかりにくいものの、果実や葉に発生する黒星病にはかかりやすいため防除が必要になる。
果実が実る時期に気温が上昇しても、果実は安定して良好な色がつき、食味も良好なため、りんご生産者の経営の安定に貢献すると期待される。