有害物質1,4-ジオキサンの分解菌を多種類発見―多様な菌が共同的に働いて安定的な分解を維持:産業技術総合研究所
(2018年6月15日発表)
(国)産業技術総合研究所は6月15日、(株)日本触媒と共同で、石油化学工業排水中に含まれる有害物質1,4-ジオキサンを安定的に分解処理する微生物を多数発見したと発表した。多様な微生物が協働的に働いて安定的な分解が維持されることが今回の発見で明らかになったとしている。
1,4-ジオキサンは、石油化学製品の製造プロセスで副次的に生成され、塩素系溶剤の安定剤として広く用いられている物質。人への発がん性が疑われ、環境・排水基準の強化が世界的に進んでいる。
近年、1,4-ジオキサンの処理法として、低コストで環境負荷の低い生物処理が注目されているが、1,4-ジオキサン分解菌はこれまで時間と労力のかかる分離培養法でしか調べることができず、分解菌とその作用の実態は分かっていなかった。
研究グループは今回、炭素同位体13Cを用いて1,4-ジオキサンの分解過程を追跡する高感度同位体追跡法という産総研の開発技術を用い、生物処理槽の活性汚泥中の微生物を調べた。
その結果、1,4-ジオキサン由来の13Cを体内に取り込む微生物を9種類発見した。このうちの1種は既知の1,4-ジオキサン分解菌だが、その他8種の分解菌はそれぞれ異なる遺伝子を持った微生物で、これまで1,4-ジオキサンを分解するという報告例がなかった微生物だった。
これら分解菌の処理槽内での年間の存在状態を調べたところ、季節などに応じたそれぞれ異なる変遷パターンが認められた。これらの調査結果から、多種類の分解菌が1,4-ジオキサンの安定的な除去に協働的に関与していることが示されたとしている。