斜視、腎機能障害、難聴などの合併の原因を解明―全ゲノムを解析し転写因子MAFBの変異を同定:昭和大学/関西医科大学/筑波大学
(2018年6月25日発表)
昭和大学と関西医科大学、筑波大学などの共同研究グループは6月25日、先天性眼球運動障害の一種のデュアン眼球後退症候群と、ネフローゼ症候群の一種の腎糸球体硬化症を合併する稀な症例患者3人の全ゲノムを解析したところ、この合併症の原因は転写因子MAFBの変異であることが明らかになったと発表した。今後病態の本格的な解明が期待されるという。
デュアン眼球後退症候群(DRS)は斜視症候群の一種で、約1,000人に1人の頻度で発症。全斜視の原因の1-5%占め、DRSの30%は腎、難聴、四肢奇形などの眼外症状を合併するとされる。
腎糸球体硬化症(FSGS)は血液をろ過する糸球体の血管構造に破綻をきたす病で、尿中に大量のたんぱく質が混じるネフローゼ症候群の一種。
研究グループはこのDRSとFSGSが何らかの単一遺伝子変異により生じるのではないかと考え、今回、DRSとFSGSを合併する稀な2家系3患者を対象に、次世代型ゲノムシークエンサーを用いて全ゲノム解析を行った。
その結果、DNA情報のRNAへの転写に関わっている転写因子の一つであるMAFBに変異があり、それが原因であることを見出した。MAFBは腎糸球体のろ過機能を司っている細胞や脳幹神経細胞の形成に関わっている転写因子で、MAFBがDNAと結合する部分の塩基配列に一か所変異があり、それによってアミノ酸が異なってしまうミスセンス変異であった。
変異の同定を踏まえ、研究グループはゲノム編集技術を用いてこのミスセンス変異をマウスに導入し、患者らと同様のFSGS病変が起こることを疾患モデルマウスで確認した。
今後、腎糸球体硬化や眼球運動障害、難聴などの発症機構の理解が深まり、新たな治療法の開発につながることが期待されるとしている。