豪雨による水稲被害のリスクを評価する手法を開発―将来の気候変動を見越した対策が可能に:農業・食品産業技術総合研究機構
(2018年7月5日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は7月5日、豪雨による水稲被害のリスクを評価する手法を開発したと発表した。
2015年の関東・東北豪雨、昨年の九州北部豪雨、そして今回の西日本豪雨と、豪雨は様々な地域で発生し、そのたびに農業の根幹をなす水田は冠水によって大きな被害を受けている。農林水産省の算定によると水田の冠水被害などは、一年間に全国で平均して43万ha(ヘクタール)発生している。
更に、今後は気候変動の影響で、これまでに経験のない激しい豪雨が発生する可能性のあることが指摘されており、冠水被害の増加が心配されている。
こうしたことから農研機構は、気候変動を考慮した豪雨の雨量変化と、それに伴う水稲被害を予測することができる手法を開発した。
具体的には、将来起こり得る多数の豪雨をシミュレーションで発生させ、その地域で起こり得る豪雨の強さと発生頻度を推定。それぞれの豪雨で生じる水田の冠水被害を推定してリスクを統計的に評価するというもの。
全国各地の水田の現在と将来の豪雨による水稲の減収量が予想できる。
研究グループは、例としてこの手法を使って石川県南部の小松市と加賀市の両市にまたがっている加賀三湖(かがさんこ)と呼ばれる地区の水田約4,000haを対象にして近未来の豪雨とその際の水稲被害のリスク評価を行なった。
加賀三湖は、金沢平野に点在する三つの潟湖(せきこ)のことで、今は多くが干拓地になっているが、その加賀三湖地区で平均して10年に1回程度発生する規模の、いわゆる“10年に1回の豪雨”の最大降雨量が現在の450mmから近未来(2026〜2050年)には560mmにまで増大。約4,000haの水田の水稲が受ける最大規模の被害量が2,381tから21世紀末には3,047tと1.28倍になる予測結果が出たとしている。
この手法は、農地浸水のハザードマップ(被害予測図)作成などにも使えると研究グループはいっている。