パン用小麦の新品種を開発―おいしいフランスパンが作れる:農業・食品産業技術総合研究機構ほか
(2018年7月6日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は7月6日、パン用小麦の新品種を鳥越製粉(株)と共同で開発したと発表した。
国産小麦の多くはうどん作りに使われ、パン用の小麦は海外からの輸入に頼っているのが現状で自給率のアップが望まれている。
新品種の名称は、「さちかおり」。栽培性の良い「西海174号」種を母に、パン作りに向いている「中系05-44」種を父にして人工交配を行ない半数体育種法(はんすうたいいくしゅほう)と呼ばれる方法を使い作った。
小麦粉は、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉の4つに分けられるが、新品種「さちかおり」はその内の準強力粉を作る小麦で、フランスパンを作るのに向いている。
農研機構は、鳥越製粉と共同で「さちかおり」と、現在栽培されているパン用小麦の「ミナミノカオリ」でそれぞれ作ったフランスパンの比較を行っているが、「さちかおり」を使って焼いた方がうま味成分のアスパラギン酸、グルタミン酸、甘味成分のグルタミン、グリシン、アラニン、プロリンの全てがずっと多くなることが判明。九州栄養福祉大学と協力して作ったフランスパンの官能評価(人の五感による評価)を実施した結果、「ミナミノカオリ」より膨らみが大きく、クラム(内部の白い部分)がもちもちした食感のパンが作れることが分かった。
また、「さちかおり」は、「ミナミノカオリ」より収量が1割程度多いという特徴も持っている。「ミナミノカオリ」は、成熟期がやや遅いために収穫期が初夏の降雨時期に重なりやすいが、「さちかおり」は早生(わせ)で「ミナミノカオリ」より成熟期が2~4日早い。
栽培適地は、九州地域などの暖地・温暖地で、すでに佐賀県のみやき町を中心に栽培が始まっている。