痛覚過敏発生の新メカニズム―分子レベルで発見:筑波大学
(2018年7月9日発表)
筑波大学は7月9日、やけどや傷が治った後でも痛みだけが長期にわたって続く痛覚過敏が起きる分子レベルのメカニズムを米インディアナ大学と共同で発見したと発表した。ショウジョウバエを用いた実験で見つけたものだが、ヒトなどの哺乳類でも同様の仕組みが働いている可能性が高いとしている。
筑波大・生命環境系の本庄賢特任助教が、インディアナ大のD.トレイシー准教授と共同研究して発見した。今回の研究ではまず、本庄特任助教らが2016年に発見した痛覚神経の機能に関わるハイワイヤー(Highwire)と呼ばれる遺伝子に注目、その働きを詳しく解析した。
その結果、痛覚神経でハイワイヤー遺伝子の機能が異常になると、骨が形成されるときに細胞内で情報伝達役として働くたんぱく質「BMP」が痛覚神経細胞内で過剰に活性化していることを見出した。さらにBMPの過剰な活性化が痛覚神経を刺激し、動物に個体レベルで痛覚過敏症状を引き起こすことを突き止めた。ハイワイヤー遺伝子と細胞内BMPを介した分子レベルの情報伝達が痛覚神経の機能調節に関わっていることが分かったのは、今回が初めて。
ハイワイヤー遺伝子と細胞内BMPの情報伝達経路は人を含むほ乳類にも存在しており、痛覚神経が損傷すると細胞内BMPの情報伝達が活性化されることはこれまでにも報告されていた。また、痛覚神経の損傷は神経因性疼痛発症の主な要因の一つとして知られていた。
こうしたことから、本庄特任助教らは「今回の研究で見つかった新たな分子経路は、神経因性疼痛発症に関係している可能性が考えられる」と話している。