睡眠と覚醒の仕組みに手がかり―脳内の神経回路を解明:筑波大学
(2018年7月17日発表)
筑波大学は7月17日、覚醒と睡眠の切り替えが脳の中でどのように制御されているかを解明したと発表した。ヒスタミンやノルアドレナリンなどの覚醒・睡眠に関わる神経伝達物質が脳内でどのような神経回路を通じて働いているかを明らかにした。五人に一人が何らかの問題を抱えているといわれる睡眠の仕組みの一端を解明したもので、睡眠障害の治療薬開発などに役立つと期待している。
筑波大 国際統合睡眠医科学研究機構の齋藤夕貴さんと櫻井武教授が、金沢大学の前島隆司助教、群馬大学の柳川右千夫教授らとの共同研究で明らかにした。
研究グループはまず、覚醒状態を維持するのに重要な働きをしている神経伝達物質のオレキシンとヒスタミンをつくる神経細胞に、他のどのような神経細胞が接続しているかを、マウスを使って調べた。脳内でどの神経細胞と接続しているかは、感染すると筋肉から運動神経を経由して脳内までさかのぼっていく性質がある狂犬病ウイルスを、遺伝子操作の手法で毒性をなくしたうえで利用した。
その結果、覚醒の開始と維持に重要なヒスタミンとオレキシンをつくる一群の神経細胞が、脳の視床下部の一部「視索前野」にあって睡眠の制御に重要な働きをしている神経細胞「GABA作動性ニューロン」と直接信号をやり取りしていた。さらにこのGABA作動性ニューロンは、覚醒に重要な神経伝達物質セロトニンとノルアドレナリンによって、働きが抑制されることが明らかになった。
睡眠制御に関わるGABA作動性ニューロンと覚醒をつかさどるオレキシン、ヒスタミン、ノルアドレナリン、セロトニンの関係が明らかになったことで、研究グループは「視床下部と脳幹が関わる神経回路が睡眠・覚醒制御をしていることが示唆された」と話している。