プライバシー保護して医療データ解析する暗号方式を実証―医療ビッグデータの安全な利活用に道:情報通信研究機構/筑波大学ほか
(2018年7月17日発表)
(国)情報通信研究機構(NICT)と筑波大学、(国)科学技術振興機構は7月17日、三重大学の協力を得て共同で医療データを暗号化したまま解析することに成功し、開発した暗号方式の性能を実証したと発表した。
健康や医療の研究開発をより効率的に行なえるようにしようと「医療ビッグデータ法」が昨年5月に施行されたのに伴い、プライバシーを保護し医療データを安全に利活用して新たな治療法の開発などを行なおうという動きが活発になってきている。
医療ビッグデータとは、全国の病院などの医療機関が持っている患者の病名や症状、治療方法、検査データといった膨大な医療情報のこと。この情報を収集し解析を加えて新薬や新たな治療法の研究開発に利活用しようというのが医療ビッグデータ法の狙い。
そこで求められるのが、患者のプライバシーの保護で、たとえば各病院の様々な医療データを誰のものであるか分からないよう暗号化し、それを遺伝情報を管理する検査機関に送り遺伝情報との関連性を解析、その解析した暗号文を解いて利活用するというような方法によりプライバシーを保護することが考えられている。
今回その医療データの暗号化と解析がプライバシーを保護したまま行えることを実証した。
研究は、暗号化データ解析手法の開発と暗号化データ解析ツールの開発をNICTが、筑波大が暗号化データ解析手法の開発と共に医療データ検定方法の検討を担当、三重大学が臨床情報と遺伝情報のデータベース化で協力するという体制で実施。実験は、患者の同意を得て三重大学病院が集めた匿名化された医療データを用いて行った。
その結果、4,500人程度の医療データの暗号化と解析を1分弱で行なうことに成功した。
医療データを暗号化すると、暗号化されているがゆえに、それが解析対象のデータであるのかどうかの判別ができない。そのため、対象外の医療データが入ったらそれを検出できるようにする必要があるが、実験では異なる医療データの暗号文が混在した場合でも数ミリ秒程度の高速でそれを検出できることを確認した。
研究グループは「個人のプライバシーを保護して情報漏えいを防ぎながら医療ビッグデータを安全に利活用できるようになり、新たな診断方法や治療法の開発につながることが期待される」といっている。