オスがメスを嫌って逃げる不思議な習性を発見―害虫「ゴマダラカミキリ」で食べたエサの違いにより発生:農業・食品産業技術総合研究機構
(2016年7月20日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は7月20日、ミカン栽培農家の最大の敵と恐れられている害虫「ゴマダラカミキリ」のオスがミカンの枝を食べたメスを交尾相手とせずに恐れをなしてそのメスから逃げてしまうことを発見、そのオスの逃避行動がメスの体の表面に付着したミカン枝由来の物質「β-エレメン」により引き起こされていることを解明したと発表した。
オスがメスを追うのは、世の常。虫の世界では通常、オスがメスを避けることはない。
ゴマダラカミキリは、背面が硬いハネで覆われていてカブトムシなどと同じ仲間の甲虫(こうちゅう)の一種。成虫の体長は、25〜35mm。全体が黒い色をしていてハネに白い斑点があることからホシカミキリとも呼ばれる。北海道から九州まで日本全土に広く生息し、ミカンをはじめブルーベリー、ヤナギなどの枝や幹を食べ深刻な被害が各地で出ている。
中でも若いミカンの樹などは、このゴマダラカミキリが一匹食い込んだだけで樹が死んでしまうこともあるといわれる。
今回の成果は、異なるエサを食べたゴマダラカミキリのオスとメスの交尾行動を観察、ミカンの枝を食べたメスにヤナギやブルーベリーの枝を食べていたオスを近付けると高い確率でオスが恐れをなして逃避行動を起こすことを見つけたもの。
通常、メスに遭遇したゴマダラカミキリのオスは、メスに拒否されたとしても、メスにしがみつき交尾する。
しかし、ヤナギ枝を食べたオスは、そうならず、ミカン枝を食べたメスに自分の触覚が触れるか触れないかで一目散に逃げてしまい交尾しないことを発見した。
また、体の表皮成分を分析したところ、β-エレメンがメスの体表からのみ検出され、この物質がオスの逃避行動の要因であることが分かった。
研究グループは、今回の研究の前にゴマダラカミキリのメスはエサとしてミカンを最も好み、オスは直前まで食べていた植物を好む習性を持っていることを明らかにしている。
このことと今回の結果から、ミカン以外の果樹園、たとえばブルーベリー園の中にミカンを植えておくようにすればメスのゴマダラカミキリはミカンに集まり、オスはミカン枝を食べたメスを避けるようになって交尾行動が阻害され雌雄の食べ物の好みを利用したゴマダラカミキリの農薬を使わない新たな防除技術を開発できる可能性があると農研機構は見ており「今後、実証試験を行っていく予定」といっている。