気象予測情報の活用で農作物の障害対策に効果:気象庁/農業・食品産業技術総合研究機構
(2016年7月21日発表)
国土交通省の気象庁と(国)農業・食品産業技術総合研究機構は、2週間から1か月先の気象予測情報を活用した農業技術の高度化の共同研究を2011年から5年間実施し、農業技術の改善に効果がみられたと7月21日に発表した。東北地方の水稲障害や西日本の小麦の赤かび病の改善などに効果があり、水田の水深管理や薬剤散布などに活用できるとしている。
地球の温暖化が進むにしたがって、様々な農産物の生育障害が目立ち、食糧生産への打撃も心配されるようになった。この対策には、従来のような直前の広域気象予測だけではなく、中規模でそれぞれの農地に適したきめ細かい情報が必要になっている。
気象庁は2週間から1か月程度の農業気象予測に取り組み、1キロ四方の細かさで農家に提供できるように改善した。農研機構は、その予測に基づいて農産物への悪影響を軽減し、好影響があればそれを利用できるようなリスク管理を進めた。
北海道から九州沖縄までの5か所の農業研究センターでそれぞれのテーマで取り組んだ。
九州沖縄農業研究センターは、米が実る初期から中期にかけて高温や日照不足によって玄米が白濁し品質低下をきたす高温障害予測に取り組んだ。2014年から2015年にかけて追肥を実施ししたところ高温対策に効果があった。高温にならなかった場合でも追肥によるマイナスリスクは少なく、気象対応型の追肥は可能と見ている。
近畿中国四国農業研究センターは小麦の赤かび病対策に取り組んだ。最近普及している無人ヘリコプターによる防除には2~3週間前の開花期の予測が必要となる。2週目までの気温予測を利用して開花期を推定し、ウェブ上で公開した。
東北農業研究センターでは、岩手県立大学と共同でグーグルマップを使った1週間先までの農産物警戒情報を出しているが、これを改善して2週間先、1kmスケールの農産物警戒情報を試作した。
農研機構ではこれらの成果をもとに、3~5年先には全国を対象にした早期警戒・栽培管理支援システムを開発し、実用化したいとしている。