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脊椎動物の「頭」の細胞の進化的な起源を解明―ホヤを用いた実験によって明らかに:筑波大学

(2018年7月31日発表)

 筑波大学は731日、生命環境系の堀江健生助教らの研究グループが脊椎(せきつい)動物の「頭」の細胞の進化的な起源を解明したと発表した。

 脊椎動物と近縁な脊索(せきさく)動物のホヤを用いた実験で脊椎動物の頭の部分(頭部)にある重要な「頭部プラコード」、「神経堤細胞」と呼ばれる細胞の進化的な起源とその発生プログラムを明らかにしたというもので、米国プリンストン大学との共同研究によって得た。

 脊椎動物の大きな特徴の一つは、脳と共に眼、鼻、耳などの感覚器官を備えた頭部を持っていること。その頭部の眼や鼻などの感覚器のもとになる細胞を作り出すのが頭部プラコード、感覚神経や色素、頭がい骨などを作るのが神経堤細胞で、共に脊椎動物特有の組織と考えられてきた。

 しかし、この“定説”は、数年前に英国の科学誌「Nature」に掲載された研究報告によって変わった。その研究報告は、原始的な無脊椎動物であるホヤにも頭部プラコードと神経堤細胞の性質を備えた細胞があることが分ったというものだった。

 だが、脊椎動物は、進化の過程でどのようにして頭部プラコードと神経堤細胞を獲得したのか、たとえば頭部プラコードと神経堤細胞は進化的に共通の起源を持つのか、それとも別々の起源を持つのかはまだ解明されていない。

 そこで研究グループは、ホヤについて細胞分裂を追跡する細胞系譜追跡実験や、体を構成する全ての細胞一つひとつの遺伝子の発現を調べる単一細胞トランスクリプトームと呼ばれる最新の実験手法などを使い包括的に解析することを試みた。

 その結果、ホヤの頭部プラコードと神経堤細胞由来の細胞は互いに良く似た性質を備えていることが判明。頭部プラコードと神経堤細胞は、共通の進化的な起源から派生した可能性があることが分かった。研究グループは「これは、脊椎動物の進化を解明する上で重要な発見です」と語っている。

 この研究成果は、日本時間の82日に「Nature」でオンライン公開されると筑波大は言っている。