植物の低温耐性の仕組み―遺伝子レベルの全容解明に道:筑波大学
(2018年8月1日発表)
筑波大学は8月1日、植物が低温に耐える仕組みの一端を遺伝子レベルで解明したと発表した。植物には低温下でさまざまな遺伝子が働いて低温ストレスへの耐性を高める仕組みがあるが、その働きを調節する2種類のたんぱく質を突き止めた。植物の低温耐性の仕組みの全容解明につながると期待している。
植物は低温環境にさらされると、植物体内にある低温シグナル伝達経路によってその情報が伝えられ、低温環境に順応できるよう関連するさまざまな遺伝子の働きを調節することが知られている。さらに、それらの遺伝子の働きを調節するたんぱく質「転写因子」として、既にICE1と呼ばれる物質が見つかっていた。
今回、筑波大の三浦謙治教授らの研究グループは、低温シグナル伝達経路をさらに詳しく調べるために、このICE1を作る遺伝子と相互作用してその働きを調整するたんぱく質の存在を探索した。その結果、低温ストレスに関わるICE1遺伝子の働きを調節している転写因子として、新たに2種類のたんぱく質(MYC67とMYC70)の存在が浮かび上がった。
既に知られているICE1は、低温シグナル伝達経路で低温ストレスの情報が植物体内に伝えられると過剰に作られて、植物が低温ストレス耐性を示すようになる。これに対し新たに見つかったMYC67とMYC70は、ICE1を作る遺伝子の働きを抑制することが分かった。実際に実験用植物「シロイヌナズナ」の細胞を使ってMYC67やMYC70を作らないよう突然変異させると、それらの細胞は低温ストレス耐性が強くなった。
研究グループは、ICE1と相互作用する転写因子はMYC67とMYC70以外にも単離しているとしており、「これらの分子機構を明らかにして、植物の低温耐性研究に役立てたい」と話している。