2ホウ化アルミニウムにトポロジカル超伝導体の可能性―高品質単結晶を軟X線で観測し、特殊な電子状態を発見:東北大学/高エネルギー加速器研究機構
(2018年7月31日発表)
東北大学と高エネルギー加速器研究機構の共同研究グループは7月31日、2ホウ化アルミニウム(AlB2)という物質が、「線ノード型のディラック粒子」と呼ばれる新しいタイプの電子状態を持つ物質であることを発見したと発表した。これまでよりもはるかに高い超伝導転移温度を持つトポロジカル超伝導体の実現の可能性があるという。
AlB2は、青山学院大学の研究者らが2001年に発見した高温超伝導体の2ホウ化マグネシウム(MgB2)のMgを、Alに置き換えた物質。MgB2は絶対温度39K(ケルビン、0(ゼロ)Kは約-273℃)で超伝導を示す。
AlB2は非超伝導体だが、MgB2と同型の結晶であり、AlはMgより電子が1個多いだけの物質なので、その電子状態は非常によく似ている。そのため、MgB2の超伝導を保ったまま、π軌道に十分な電子を供給することができれば、これまでよりもはるかに高い超伝導転移温度を持つトポロジカル超伝導体が実現できるという。
研究グループは今回、AlB2の高品質な単結晶を作製、放射光施設で得られる軟X線を用いてAlB2の電子状態を観測した。その結果、ディラック粒子の特徴であるX字型のバンド分散を観測するこ とに成功した。
さらに高精度な観測を行ったところ、このAlB2のディラック粒子がエネルギーを変えながら面直方向に連なる「線ノード型」と呼ばれる特殊な電子状態を持つことを見出した。
これらの研究成果から、AlB2がトポロジカル超伝導体になりうる特殊な電子状態を持っていることが明らかになったという。