[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

トピックスつくばサイエンスニュース

雪を赤く染める赤雪現象は、南極と北極で同じ藻類が引き起こす―2万km離れた両極を大気循環に乗って交流、分散し、温暖化にも影響:山梨大学/国立環境研究所ほか

(2018年8月3日発表)

 山梨大学総合分析実験センターと(国)国立環境研究所、千葉大学理学部などの研究グループは83日、極地や高山の雪を赤く染める「赤雪現象」の原因となる藻類を遺伝子解析し、大半の藻類が南極と北極に共通に分布していることを確認したと発表した。約2kmも離れた南極と北極の間を、現在も大気の流れに乗って交流、分散しているとみられる。赤雪は太陽光を吸収して残雪や氷河表面の融解を早めることから、地球温暖化にも影響を与えていると注目される。

 赤雪は残雪や氷河上で繁殖する藻類の一種。多くは緑色の藻類に分類されるが、氷雪上の強い紫外線によるDNAの損傷を防ぐため、細胞内に赤い色素を溜め込みサングラスのように機能することから、繁殖すると雪が赤く染まったように見える。

 日本でも北海道の大雪山旭岳や富山県・立山など各地の高山に見られて観光ポイントにもなっている。

 研究グループは距離的に離れた南極と北極の氷雪藻類のDNAを抽出し、同一種かどうか塩基配列を解読し、系統解析をした。

 その結果、南極と北極の赤雪には全部で22種類の藻類が含まれ、そのうち15種は北極か南極のどちらかに存在する希少種で、残りの7種は南極と北極の双方から検出された。7種は解析した全塩基配列の94%を占めるメジャー種だった。

 また7種の塩基配列は、時間経過にも関わらず遺伝子の変化を起こさずに共通していたことから、現在も大気の流れに乗って分散、交流をしていると見られる。

 今後、中緯度のサンプルも加えて全地球レベルで評価し、地球温暖化への影響も調べることにしている。