西アフリカで農業に適した土壌を見分ける手法を開発―栽培管理、土壌保全が容易で、飢餓と砂漠化の克服に期待:国際農林水産業研究センター
(2018年8月8日発表)
(国)国際農林水産業研究センターは8月8日、西アフリカのスーダンサバンナで農業生産が可能な土壌を地中レーダーで正確、迅速に探すことのできる技術を開発したと発表した。鉄分が多い硬い複雑な土壌分布の中から、生産可能な適地を見つけ出す方法で、これまで1年近くかかっていた作業が数日でできる。持続可能な農業につながり、飢餓や砂漠化の克服にもつながるものと期待が高まっている。
スーダンサバンナとは、サハラ砂漠の南に位置するセネガル、ガンビア、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、ベナン、ナイジェリアの7カ国にまたがる半乾燥地帯を指す。降雨量が少ない上に、特殊な「プリンソソル」と「リキシソル」という農業生産力の違った土壌がまだら状に分布している。
プリンソソルは鉄分が多く土壌粒子が結合した硬い鉄石や、鉄石同士がさらに結合して大きな板状になった鉄石固結層が地中の浅いところを占めるため、作物生産が難しい。
これに対してリキシソルは鉄石層や鉄石固結層が土中の浅いところにはなく、プリンソソルより作物が2倍から4倍も育ちやすい。リキシソルの土壌を簡単、正確に見つけられれば農耕が可能になる。
ところが両者は土中でまだら状に複雑に入り組んでいるため、適地を見極めるのは難しく、これまでは専門家が一つずつ穴を掘って探索するほかなく、大幅な時間と手間がかかった。
国際農研の伊ヶ崎健大研究員らはブルキナファソ環境農業研究所と共同で、800MHz(メガヘルツ)と300MHzの2つの電磁波を同時に地中に放射し、リキシソルとプリンソソルの境界面で反射した電磁波を捉える手法で、境界面の深度などの土壌図を推定する方法を開発した。
新しい方法は測定器をカートに乗せて水平に移動させるだけでできる。カートは1秒間に1mの速さで動かせる。これまでの土壌調査は専門家が1年近くもかけたが、新手法では専門知識がなくとも数日で調べることができるようになった。
農耕地と非農耕地を簡単に見分け、少ない農耕地を有効に利用することによって飢餓問題と土地の砂漠化を防ぐことに繋げられると見ている。