介護施設入所者の急性期病院への入院状況を調査―介護老人福祉施設では3割以上が入院:筑波大学
(2018年8月9日発表)
筑波大学は8月9日、介護施設に入っている高齢者の急性期病院(急患や重症患者など用の病院)への入院状況を調べ発表した。
「介護老人福祉施設」と「介護老人保健施設」入所者の急性期病院への入院率を明らかにしたもので、この 種のデータが得られたのはこれが初めてという。
介護老人福祉施設とは、寝たきりや認知症など自宅では介護が難しい高齢者の入る施設。一方、介護老人保健施設は、介護が必要な高齢者の自立を支援する施設のこと。
筑波大は、「介護施設入所者の入院という医療介護連携の重要事項について、わが国初のエビデンス(科学的根拠)が得られた」としており、介護データベースの研究が進むきっかけとなることが期待される。
わが国の75歳以上の後期高齢者は、総務省の今年3月の発表によると1,770万人に達しているが、今後さらに増え2025年には1947〜1949年に生まれた、いわゆる“団塊(だんかい)の世代”が全員75歳以上になる。そのため、それに対応する医療と介護の連携をいかに図っていくかが課題になっている。
今回の調査研究は、筑波大のヘルスサービス開発研究センターと東京大学、東京都健康長寿医療センターとが共同で千葉県柏市の「医療介護連結レセプトデータ」(レセプトはレシートのこと)を分析する方法によって実施した。
調査は、2012年4月から2013年9月までの間の柏市での後期高齢者の介護老人福祉施設と介護老人保健施設の入所者合わせて2,065人の医療記録データと介護レセプトデータを使って行った。
その結果、入所者の急性期病院への入院率は、介護老人福祉施設が34.5%、介護老人保健施設が23.8%で、2種類の施設に大きな違いのあることが判明した。予防可能な入院も介護老人福祉施設では16.3%あったが、介護老人保健施設は9.5%だった。
調査研究チームは、この違いの理由として「介護老人保健施設の入所者は施設内で治療を受けているため救急期入院率が低い可能性が考えられる」ことを挙げている。