大動脈瘤に特定たんぱく質が関与―過剰産生抑止する新治療法も:筑波大学
(2018年8月10日発表)
筑波大学は8月10日、破裂すると死に至る危険がある大動脈瘤の形成に特定のたんぱく質が深く関与していることを突き止めたと発表した。大動脈瘤患者の血管壁ではこのたんぱく質が過剰に作られている一方、過剰産生を抑えられれば大動脈瘤の発症を抑止できる効果があることも分かった。大動脈瘤の新たな治療法の開発に道が開けると期待している。
筑波大の柳沢裕美教授、山城義人助教、平松祐司教授と関西医科大学の中邨智之教授らの研究グループが、マウスを用いた実験研究で明らかにした。
今回、明らかになったのは、血管を収縮・弛緩させてその太さを調節している平滑筋細胞が作るたんぱく質「トロンボスポンジン(Thbs1)」の働き。健康なマウスの大動脈ではThbs1がほとんど作られていなかったのに対し、大動脈瘤のあるマウスでは血管壁を構成する内皮細胞と平滑筋細胞でThbs1を作る遺伝子の働きが活発化していた。
また、その活発化には平滑筋細胞に対する周期的な伸展刺激や、血圧上昇作用を持つ生理活性物質「アンギオテンシンⅡ」が深く関与していることが分かった。さらに大動脈壁で活発に作られるたんぱく質「フィビュリン4」がうまく作れないと、血管の伸展刺激などのストレスに対して過敏になり、大動脈瘤の形成に関与するThbs1が作られ易くなることなどが明らかになった。一方、人為的にThbs1を作る遺伝子を働かなくさせると大動脈瘤ができにくくなることも分かった。
研究グループは「胸部大動脈溜患者の血管壁ではThbs1が活発に作られていることから、Thbs1の抑制が大動脈瘤の治療にも有効である可能性が示せた」として、今後新しい治療法や新薬開発の目標になるといっている。