ホップ由来の分子の量とビールの泡の安定性に相関―ビールの表面を特殊な分光法で測定し解明:産業技術総合研究所ほか
(2018年8月10日発表)
(国)産業技術総合研究所とキリン(株)は8月10日、ビールの表面に存在する成分分子を測定し、ビールの表面に現れているホップ由来の分子の存在量とビールの泡の安定性との間に相関があることを見出したと発表した。苦みをもたらしているホップの成分が泡持ちに関与していることが確かめられたという。
ホップは、大麦の麦芽やビール酵母と並ぶビールの重要な原料で、ビールに独特の苦みと爽やかな風味を与え、殺菌剤として保存性を高める働きもしている。ホップの主要な苦み成分はイソフムロン類で、これが泡の形成にも影響を与えていることは知られていたが、ビール表面における詳細な挙動や作用は明らかでなかった。
研究グループは今回、和周波発生分光法(SFG分光法)という測定技術を用いてビールの表面を調べた。SFG分光法は、物体の表面や界面からだけ発生する特異な光を利用した測定法で、固体や液体の表面、界面での分子の配向、秩序性、相互作用などを調べることができる。
測定の結果、ビールの表面にはビールの苦みのもとを含むホップ由来の分子と、ビールに含まれるたんぱく質の両方が存在していること、ホップ由来の分子は表面に集まる傾向があること、ビール表面のホップ由来の分子が多いほどビールの泡の安定性が向上すること、などが分かった。
ビールの泡の安定化には、たんぱく質の存在とホップ由来の分子の介在が重要なことは指摘されていたが、今回初めて実験的に確認できたという。