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コムギのゲノム配列を決定―新しい品種開発や作物改良を加速、世界の食糧問題の解決に貢献:農業・食品産業技術総合研究機構ほか

(2018年8月17日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構と京都大学などが参加した国際コムギゲノム解読コンソーシアム(IWGSC)は817日、コムギのゲノム(全遺伝子情報)の塩基配列の解読に成功したと発表した。コムギの染色体内の遺伝子の位置関係が高精度に明らかになったことで、特定の遺伝子を取り出して新品種の開発や各種の病害に強い品種、パン作りに適した高品質のコムギの開発などに弾みがつく。

 コムギの品種改良には、有用な遺伝子を見つけ、その形質と繋がるDNAマーカーを取り出すことが必要となる。

 世界で栽培されているコムギは、異なる3種類の先祖からのゲノムでできた6倍体(AABBDD)と複雑なために解読が難しく、全体像が長い間つかめなかった。特に同じ先祖から分岐した塩基配列の似ている遺伝子が混じるため、遺伝子配列が分かってもどの染色体にあるのか決定できなかった。

 これを解決するために2005年に国際コンソーシアムIWGSCが組織され、日本は16か国中の主要メンバーとして「6B染色体」の解読を担当した。IWGSC2014年にコムギの核から染色体を取り出し、ゲノムの61%に相当する領域をカバーする概要配列を公表していた。

 しかしおおよその配列状態では染色体の相互の位置関係は分からない。染色体ごとに1本につながった配列から遺伝子の位置関係を高精度に突き止めることを目指し、遺伝子の数や種類も明らかにした。この結果、マーカーによって品種改良に必要な遺伝子だけを取り出し利用することができるようになった。

 今回の解析によって遺伝子は107,891個、病害抵抗性に関わる遺伝子ファミリーのものが2,000個以上、小麦粉の品種の関連が1,000個以上見つかった。

 解読されたゲノム配列情報を使うと、気候変動の影響にも強く、安定して生産が可能なコムギ品種や、収穫量が飛躍的に高い品種の開発が進むと見られる。

 農研機構はこの成果をもとに、コムギの縞萎縮病などの病害に対する抵抗性遺伝子や、おいしいパン作りに適した高品質の遺伝子の解明などを進めることにしている。