ヒッグス粒子とボトムクォークの結合を観測―物質を構成する素粒子の質量の起源解明:東京大学/高エネルギー加速器研究機構ほか
(2018年8月28日発表)
欧州の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)による素粒子物理実験の推進の一翼を担っているATLAS日本グループは8月28日、これまで観測できなかった「ヒッグス粒子がボトムクォークと相互作用する証拠」をついに観測したとする実験成果を発表した。
この観測により、ヒッグス粒子とボトムクォークの結合、ヒッグス粒子とトップクォークの結合、ヒッグス粒子とタウ粒子の結合の3つの結合が確定したことになり、物質を構成する素粒子の質量の起源がヒッグス粒子であることが解明されたとしている。
LHCは、陽子同士を衝突させる世界最大、最高エネルギーの欧州合同原子核研究機関(CERN)の円形加速器。2012年7月に、質量の起源に関わっているヒッグス粒子を発見し、以来衝突エネルギーを増強してヒッグス粒子と素粒子の相互作用の観測を行っている。
これまでに、「力を伝える素粒子」であるW粒子やZ粒子とヒッグス粒子の結合を測定し、力を伝える素粒子の質量の起源を解明。また「物質を構成する素粒子」についても、第三世代に属するトップクォークとタウ粒子について、ヒッグス粒子との結合を観測している。
今回、2017年までの観測データを解析した結果、ヒッグス粒子がボトムクォーク対に崩壊した事象を高い確度で観測した。第三世代の素粒子のうちでこれまで観測されていなかったボトムクォークとヒッグス粒子の相互作用が観測された結果、第三世代の素粒子とヒッグス粒子の相互作用がすべて観測されたことになり、物質を構成する素粒子の質量の起源が解明されたとしている
ATLAS日本グループは東京大学や高エネルギー加速器研究機構をはじめとする全国17大学・研究機関、計約150人の研究者から成るグループで、ATLASと呼ばれるLHCの観測実験を世界約38か国3,000人の研究者らと協力して推進している。